Tinderなどのマッチングアプリで出会った相手と性行為をして、性病が心配になっていませんか。これから会う予定があり、何に気をつければよいか知りたい方もいるかもしれません。
この記事では、アプリでの出会いと性病の関係について研究や公的機関の情報でわかっていることを紹介します。そのうえで、会う前・行為の前にできる予防と、行為のあとに不安になったときの行動を解説します。
マッチングアプリの出会いと性病の関係は?研究でわかっていること

アプリでの出会いと性病の関係については、日本でもいくつかの研究があります。ただし、調べ方によって見えてくることが違います。ここでは、研究や国の届出の情報で確認できることを順に見ていきます。
都道府県単位では、アプリの普及率と梅毒の報告数に関連がみられた
2017年の都道府県単位の公開データを用いた研究では、大手マッチングアプリ3つの普及率と梅毒の発生率の間に、統計的に有意な相関(順位相関係数0.56〜0.59)がみられました。※
研究者は、アプリの普及率は梅毒の発生率と有意に関連しており、SNSの普及が梅毒の再流行の要因の一つである可能性があると結論づけています。※
ただし、これは都道府県単位のデータを分析した研究です。アプリの利用が利用者同士の何らかの関係(性的なものかどうかを含む)につながったかは特定できない、と研究者自身が限界として述べています。※
個人を対象にした調査では、アプリの利用より「カジュアルな性的関係」が関連していた
東京の3つのクリニックで梅毒の検査を受けた人を対象に、2023年7月から2024年1月にアンケートを行った研究(215人を解析)もあります。※
この研究で、梅毒陽性と有意に関連したリスク因子は以下の2つでした。※
- カジュアルな性的関係
- 性感染症にかかったことがある(既往)
一方で、マッチングアプリの利用には、梅毒陽性との有意な関連はみられませんでした。※ つまり、この調査では、アプリを使ったかどうかよりも、どのような性的関係を持ったかのほうが梅毒と関連していたという結果です。
国の梅毒の届出で集計されているのは性風俗産業の利用歴・従事歴
医師が梅毒を届け出る様式には、2019年1月から、性風俗産業の従事歴・利用歴(直近6か月以内)の有無、口腔咽頭病変の有無、妊娠の有無、過去の感染歴(治療歴)、HIV感染症の合併の有無の記載項目が追加されました。※
2021年に診断された梅毒では、男性の35%に性風俗産業の利用歴が、女性の37%に従事歴がありました。※
追加された項目に、マッチングアプリやSNSなどの出会いの経路は含まれていません。そのため、国の届出の集計からは、アプリで出会った相手から感染した人の割合はわかりません。
出会い方より大切なのは「どんな性行為をしたか」
ここまでの研究からは、アプリを使ったこと自体より、どのような性的関係を持ったかに目を向けることが大切だと考えられます。出会いのきっかけが何であっても、相手が感染しているかどうかわからないまま予防をせずに性行為をすれば、感染の可能性があります。
相手が感染しているかは見た目や症状ではわからない
性感染症は、感染症の種類によっては無症状のことも多いとされています。※ そのため、相手に症状がないように見えても、それだけで感染していないとは言えません。
治療をしなかった場合、不妊の原因となったり、神経や心臓などに深刻な合併症や後遺障害を残したりすることもあり、早期発見・早期治療がとても重要です。※
オーラルセックスやアナルセックスでも感染する
性感染症は、性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。※ オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。「挿入していないから大丈夫」とは言えません。※
オーラルセックスで梅毒がうつるのか、感染確率についてわかっていることは、こちらの記事で解説しています。
>>オーラルセックスで梅毒はうつる?感染確率についてわかっていることと検査を受ける時期
梅毒の報告数は2022年以降、年間10,000例を超えている
梅毒の報告数は、2019年から2020年に一旦減少したものの、2021年以降大きく増加しています。2022年以降は年間10,000例を超える報告がされています。※
梅毒は、感染後3〜6週間の潜伏期のあとに、感染した場所に初期硬結や硬性下疳(こうせいげかん)、痛みのない足の付け根のリンパ節の腫れがみられます。※ 不安な行為からしばらくのあいだ症状がなくても、それだけで「大丈夫」とは言い切れません。
硬性下疳やバラ疹など、梅毒の初期症状の見た目・場所は、以下の記事で詳しく紹介しています。
>>梅毒の初期症状とは?硬性下疳・バラ疹の見た目・場所・潜伏期間を医師が解説
会う前・行為の前にできる予防
アプリで出会った相手が性感染症にかかっているかどうかは、会う前にはわかりません。そのため、自分でできる予防を知っておくことが大切です。米国疾病予防管理センター(CDC)が挙げる予防法の中から、ご自身の状況に合わせてできることを選んでください。
コンドームを毎回正しく使う(梅毒は100%は防げない)
CDCは、多くのコンドームはHIVと、淋菌やクラミジアなど一部の性感染症の予防に効果があるとしています。※ 性行為のたびに、毎回正しくコンドームを使うことが予防法の一つです。※
HIVの予防にはラテックス製のコンドームが最も適しており、天然膜(ラムスキンなど)のコンドームには小さな穴があるため、HIVや性感染症の予防には使わないようにとされています。※
ただし、梅毒については、コンドームで100%予防できると過信はしないようにしましょう。※
コンドームでHIVをどこまで防げるのか、効果と限界、正しい使い方はこちらの記事をご覧ください。
>>コンドームでHIVはどこまで防げる?効果と限界、正しい使い方を解説
お互いに検査を受けて結果を共有する
CDCは、自分とパートナーが検査を受けて、その結果を共有することを予防法の一つに挙げています。※ 性感染症は無症状のことも多いため、症状の有無ではなく検査の結果で確かめることになります。※
関係が続く場合は、検査を受けて性感染症がないパートナーと、お互いだけの関係でいることも予防法として挙げられています。※
相手の数を減らす・B型肝炎とHPVにはワクチンがある
CDCは、性交渉の相手の数を減らすことも予防法の一つに挙げています。※ また、B型肝炎とHPV(ヒトパピローマウイルス)には予防のためのワクチンがあり、一部の人に接種が勧められています。※
ワクチン接種については、医療機関でご相談ください。
アプリでの出会いが続くならPrEPという選択肢
アプリでの出会いが続き、今後もHIV感染の可能性がある方には、PrEP(曝露前予防内服)という方法があります。日本エイズ学会の手引きでは、PrEPの適応を判断するために、過去3か月間と今後3か月間のHIV感染リスクを評価するとしています。※
また、開始時にはすべてのPrEP希望者に性感染症のスクリーニング検査を行うこと、服用している間は少なくとも3か月ごとにHIV感染を評価することが示されています。※ かぐやクリニックでは、オンライン診療でPrEPの処方に対応しています。
行為のあとに不安になったときの行動

コンドームを使わなかったなど、感染の可能性がある行為のあとにできることは、行為からどれくらい時間がたったかによって変わります。HIVが心配な場合は、行為から72時間以内かどうかが一つの区切りになります。
ここでは、PEPと、一定期間がたってからの検査について解説します。
HIVが心配なら72時間以内にPEPを検討する
HIVに感染したかもしれない行為から72時間以内であれば、PEP(曝露後予防内服)を検討できます。米国疾病予防管理センター(CDC)は、PEPをできるだけ早く、遅くとも72時間以内に開始するよう勧めています。※
PEPのポイントを以下に整理します。
継続的にPrEPが必要な人には、PrEPの選択肢を示し、PEPからPrEPへの移行計画を立てることも勧められています。※ かぐやクリニックでは、オンライン診療でPEPの処方に対応しています。不安な行為から72時間を過ぎる前に、できるだけ早くご相談ください。
一定期間がたってから検査を受ける(HIV・梅毒)
HIVの検査には、感染してから検査で検出できるようになるまでの「ウィンドウ期間」があります。ウィンドウ期間の長さは、検査の種類によって違います。※
HIVの検査時期の目安 CDCが示す、通常HIVを検出できるようになるまでの期間は以下のとおりです。
| 検査の種類 | 検出できるようになるまでの期間の目安 |
|---|---|
| NAT(核酸増幅検査) | 曝露後10〜33日※ |
| 抗原抗体検査(静脈血・検査室) | 曝露後18〜45日※ |
| 迅速抗原抗体検査(指先の血液) | 曝露後18〜90日※ |
| 抗体検査 | 曝露後23〜90日※ |
感染の可能性がある行為のあとの検査で陰性だった場合は、受けた検査のウィンドウ期間が過ぎてから、もう一度検査を受けるよう勧められています。※
感染後いつからHIV検査が正確になるのか、検査時期の注意点は次の記事にまとめています。
>>HIV検査はいつから正確?感染後に検査できる時期と注意点を解説
梅毒の検査時期の目安 梅毒は、感染後3〜6週間の潜伏期のあとに症状がみられます。※ 症状がないうちは判断がつきにくいため、検査を受ける時期は医療機関や保健所に相談してください。
自宅でできる検査:かぐやクリニックの4種検査キット
医療機関や保健所での検査のほかに、自宅で検査する方法もあります。選択肢の一つとして、かぐやクリニックの4種検査キットを紹介します。
キットはご自宅に届き、同梱の器具で指先から採血して、その場で検査します。返送は不要で、約15分で判定ラインを目で見て確認できます。
- HIV
- 梅毒
- B型肝炎
- C型肝炎
陽性や判定保留の結果が出た場合は、それだけでは結果は確定しません。医療機関で確認検査を受けてください。※
クラミジア・淋病は医療機関や保健所で検査を受ける
クラミジアや淋病は、4種検査キットでは調べられません。医療機関や保健所で検査を受けてください。性感染症の検査方法は症状により異なり、主に血液検査や視診、尿検査、おりものを採取した検査となります。※
性器クラミジア感染症は、女性では子宮頸管炎や不妊などを起こしますが、自覚症状の乏しい場合が多いとされています。※ 淋菌感染症も、女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、のどや直腸の感染では症状が自覚されないことが多いとされています。※
梅毒、クラミジア、淋菌などの性感染症も一緒に検査を受けられる保健所があります。※
検査を受けられる場所と受診の目安
性感染症の検査は、保健所や医療機関で受けることができます。※ 症状があるかどうか、パートナーの感染がわかっているかどうかで、受診先を考えましょう。
保健所では無料・匿名で受けられる検査がある
保健所では、無料・匿名(名前は必要なし)でHIV検査が受けられます。住んでいる場所以外の保健所でも検査が受けられます。※ 保健所での検査のポイントは、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| HIV検査 | 無料・匿名で受けられる。住んでいる場所以外の保健所でも受けられる※ |
| ほかの性感染症 | 梅毒、クラミジア、淋菌なども一緒に受けられる保健所がある。検査項目は保健所によって異なり、一部有料の場合もある※ |
| 予約 | 予約が必要な保健所がある※ |
厚生労働省の「HIV検査相談マップ」や「性感染症検査・相談マップ」で近くの検査場所を探し、実施している検査項目や日時を事前に確認してください。※
症状があるときや相手の感染がわかったときは医療機関へ
症状がある場合や、パートナーの感染が明らかな場合は、病院やクリニックの受診が勧められています。※ 厚生労働省の性感染症検査・相談マップが挙げる、おすすめの診療科は以下のとおりです。※
| 診療科 | 目安 |
|---|---|
| 性病科・感染症科・泌尿器科・婦人科 | 性感染症の検査・診療 |
| 皮膚科 | 皮膚に症状のある場合 |
| 耳鼻咽喉科 | のどに症状がある場合 |
性感染症の多くは治療できますが、早期の段階で治療しなければ合併症や後遺障害が残る可能性があるものもあり、早期発見・早期治療がとても重要です。※
まとめ
マッチングアプリでの出会いと性病については、都道府県単位でアプリの普及率と梅毒の報告数に関連がみられた研究がある一方、個人を対象にした調査では、アプリの利用よりカジュアルな性的関係のほうが梅毒と関連していました。
性感染症は無症状のことも多く、オーラルセックスでも感染します。会う前・行為の前には、コンドームを毎回正しく使う、お互いに検査を受けて結果を共有するといった予防ができます。アプリでの出会いが続くならPrEPも選択肢です。
行為のあとにHIVが心配なら72時間以内にPEPを検討し、一定期間がたってから検査を受けましょう。症状がある場合は医療機関を受診してください。
参考文献
- Association between Syphilis Incidence and Dating App Use in Japan(JMA Journal 2020;3(2):109-117, PMC7590380)
- Identification of key risk factors for syphilis among high-risk populations in urban areas of Japan(Journal of Infection and Chemotherapy 2025;31(12):102863, PMID 41242432)
- 感染症法に基づく梅毒の届出状況2021年(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
- How to Prevent STIs(米国疾病予防管理センター CDC)
- 梅毒(厚生労働省)/梅毒に関するQ&A(厚生労働省)/感染症法に基づく医師の届出のお願い:梅毒(厚生労働省)
- 性感染症(厚生労働省)
- Preventing HIV with Condoms(米国疾病予防管理センター CDC)
- 性器クラミジア感染症(詳細版)(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
- 淋菌感染症(詳細版)(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
- Antiretroviral Postexposure Prophylaxis After Sexual, Injection Drug Use, or Other Nonoccupational Exposure to HIV – CDC Recommendations, United States, 2025(米国疾病予防管理センター MMWR Recommendations and Reports Vol.74 No.1)
- Getting Tested for HIV(米国疾病予防管理センター CDC)
- 日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き 第2版(日本エイズ学会)
- HIV検査相談マップ/性感染症検査・相談マップ(厚生労働省)

